国立音楽大学を卒業してすぐにプロの道に入りました。もともとビブラフォンという楽器は珍しい楽器で、目指す人も少ないんですが、子供の頃から マリンバ(木琴)をやってたのと、独特の深みのある魅力的な音色に魅せられて楽器を始めました。特にミルト・ジャクソンの音に痺れたのがきっかけになりま した。最初の頃は誰かのソロをそのままコピーして演奏していましたが、ちょっとつまづくとすぐにどこをやってるのか分からなくなり、共演している先輩達に 怒られる毎日でした。その頃はまだ世の中にキャバレーという社交場があり、どのお店にも生バンドが入っていました。そのお蔭で毎日演奏する事が出来まし た。これはジャズ・ミュージシャンの卵にとっては最高の練習場所でもありました。しかし時代と共にこういう仕事場が減って行き、今となってはほとんど皆無 といってもいいと思います。
私がプロとしてキャバレーで仕事をするようになった当初、日本のビブラフォンの先輩達はライオネル・ハンプトン、我々世代はミルト・ジャクソンやボビー・ハッチャーソンの影響を受けて育ちました。
まだまだ私自身未熟者なのでより一層の努力をしないといけない身なんですが、46年間一生懸命にやってきてふと周りを見ると、私がスタートした 頃の正統派のvib奏者がほとんどいなくなってしまったように思います。もちろん音楽の流行も年と共に変わって行くのは自然の流れなんですが、基本は今も 昔も同じなんです。
私はピアニストのジョン・ルイスさんのお蔭でアメリカのジャズ・フェスティバルに二度出演させていただき、そこで憧れだったミュージシャン達と 何度か共演し、ここでスイングするというのはどういう事なのかを身を持って体験しました。なのでこれからはそれを若い人達に継承していく事が私の一つの使 命ではないかと考えております。
(vib)大井貴司